静岡新聞平成5年4月14日

招待席


 巷に外国の方を見かける機会が多くなりました。年々低下する出生率を考えれば、日本の産業を支える労働力不足は憂慮すべき事態です。すでに外国人労働者が、私たちの地域社会の一角にしっかり根を下ろしている現実を受け止め、しかもこれからもその依存度がますます増すとすれば、これを排斥するのではなく、隣人として受け入れよう。
 医療人としての私たちにとって、その彼らの医療が半数近くは自費診療であるという事実は結核やエイズなどの感染症の予防という観点からも放置できない問題です。同じ地域で暮らしている以上、同じ地域の皆が健康でなければ、私たち一人一人の健康もあり得ないのです。例えば、誰かが結核になっても知らずに医者にかからず、バイ菌を撒き散らせば、他の人の健康も脅かされる訳で、そこには国籍など関係ないのです。
 国籍を問わず日本国内に住むすべての人を国民皆保険の傘のもとに入れる必要性をアピールしていきたい。それが私たちが市内25団体に呼びかけて始めた「外国人労働者医療援助基金創設チャリティバザール」の目的です。この運動もなかなか誤解が多く、大変苦労しておりますが、私たちは医療人として、この問題を放っとくわけにはいかないと考えて行動しております。
 現実に無保険で困っている方々に愛の手をさしのべるとともに、私たちの地域社会を守るためにも必要なことなのだということを訴えてまいりたいと思っております。


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